頭部外傷

【頭部外傷について】

頭部打撲についてお話ししましょう。

脳外科の外来では、かなりの数の患者さんが交通事故や転んで転倒したりして頭部打撲を主訴に来院されます。交通事故でいらっしゃる方の多くは頭をぶつけたかどうかもわからない、どこも痛くなくて、たんこぶさえない人です。そして気になるのは首筋から後頭部にかけて重く張った感じというものです。これらのほとんどは頭蓋内には何も異常はなく、頸椎捻挫、つまり”むち打ち”の症状なのです。頭蓋内の構造に損傷を与える重要な要素は加速を急に止められる事ですが、フロントガラスやサイドガラスに相当強く頭部をぶつけない限りは、そういう状態にはならないことがほとんどです。もちろん交通事故で相手があり後遺症の事を考えるにはCTなどで初期にきっちり画像診断しておいた方がいいのですが、むしろ後々まで残り、やっかいなのはこの頸椎捻挫の方なのです。この症状の出方の程度や回復の仕方は人それぞれで、最初の1週間にあまり首に負担をかけないこと(重いものを持ったり、高い枕をしない、長時間の同じ姿勢をしないなど)くらいしか注意することがないのが実情です。あとはゆっくりとしたストレッチをしたり、慢性期には首の牽引やマッサージなどで症状の軽減を図ります。筋肉の緊張を和らげる薬もありますが、症状の軽減はできても回復を速めるわけではありません。

次に転んだり、人とぶつかって頭をぶつけたと言って来院する方も多いですね。基本的には人同士でぶつかっても頭の中にまで影響を及ぼすことは、まずありません。ぶつけたところが痛いのはあたりまえです、ただし吐き気などが続いたり嘔吐したりした場合はCTなどのチェックが必要となります。 転んで頭部を打撲した時のポイントは、高さとそのぶつけた物(コンクリートの床なのか、絨毯なのか、角のある硬い物か、柔らかい丸い物なのか)が大切です。子供が室内で、自分の背の高さくらいから転んだり落ちても、まず頭蓋内に問題はありません。ただ角の尖ったものにぶつけた場合には縫合が必要な外傷となったり、骨の薄いこめかみ周囲では骨折になることもあるので、注意してください。
屋外で下がコンクリートであった場合や、本人の背の高さ以上のところから転落した場合は、頭蓋骨と脳の間に出血していたり、脳挫傷がある可能性もありますから念のため病院に連れて来て下さい。
ひとつ気をつけて欲しいのはお子さんの場合、周囲の親御さんの方が神経質になって心配しすぎると、子供さんもそのうち頭が痛いような気になってきてしまうことがありますので、あくまで冷静に吐き気や嘔吐がないか、頭痛は遊んでいる時にも訴えるかなどを見ていただきたいと思います。

担当医

梅川 淳一 (うめかわ じゅんいち)

関東病院院長

神経内科・リハビリ科・総合診療科

脳神経外科専門医

アロマセラピーアドバイザー

日本アーユルヴェーダ専門コース修了

外来表

脳神経・
認知症
外来
午前梅川梅川
午後梅川