てんかん

そもそも、てんかんとは何でしょうか?WHOでは「てんかんとは、さまざまな原因で起きる慢性の脳疾患で、その特徴は脳ニューロンの過度の放電に由来する反復性発作であり、多種多様な臨床症状と検査所見を伴う」とされてます。しかしこれでは、何のことかさっぱりわかりませんね。要するにてんかんは自分の意志とは関係なく、突然、意識消失や体の硬直、手足がガタガタするけいれん、その他視覚・聴覚・嗅覚に突然の異常な感じ(急に変な臭いがしたり、ピアノの鍵盤が急に飛び出してくるような気がするなど)が起こり、しばらくすると元に戻る病気のことです。重要なのは、必ずしも、手足が震えなくても、てんかんの症状の時があるということです。これらの症状は脳内のどこかから、通常(よく聞くアルファ波やベータ波など)とはちがう電気が放出され、それが周囲の脳に拡がって起こる症状なのです。

てんかんは最も罹患率の高い神経疾患で、なんと総人口の約1%(100人に1人)と言われています。生涯1回でも発作を経験する人は約10%、二回以上経験する人は約4%、何回も経験して薬を飲まなければならない人が約1%というわけです。意外と多い病気なんですね!でも実際、脳外科を31年間やらせてもらってますが、こんなにはてんかんの患者さんは多くない(この1/3くらいでしょうか)というのが正直な印象です。
原因は脳内出血、脳腫瘍、脳梗塞、けがによる脳挫傷、先天的な脳の一部の形成不全などで脳の実質に傷が付いている場合と、MRIなどで調べても特に原因となるものがわからない場合があります。

治療の原則はやはり薬物治療です。初発で症状が軽い場合は脳波(頭皮に電極を付けて脳から出る微弱な電気を測定すること)で異常がはっきりしなければ、経過をみることもありますが、繰り返したり脳波で異常な電気の波が認められた場合には、薬で発作を起こりにくくします。現在、日本では薬で発作が消失する人が58%、1/4以下に減る人が15%、1/2以下に減る人が8%くらいで、かなりいい成績にコントロールされています。しかし、幾種類もの薬を使ったり量を増やしても、発作が止まらない場合もあり、難治性てんかんと呼んで、手術の対象となることもあります。
このてんかんの薬の副作用として、やっかいなのは、飲んでいる女性が妊娠した場合、通常の約二倍の確率で奇形(口唇裂、口蓋裂、心奇形、二分脊椎など)が起こるということです。ですから、抗てんかん薬を飲んでいらっしゃる女性は妊娠に関しては特に注意を払っていただき、もし仮に妊娠が判明した場合は、早急に主治医に相談して薬の調整や中止も考えなくてはいけません。また、肝機能障害やアレルギー性湿疹などの副作用もあるので、最低年に2回は血液検査をしてチェックしておかなければなりません。

ではもし発作が起きた場合、どうしたらいいのでしょう?まずは、タオルをまるめたものなどを噛ませるようにして歯の間にスペースを作ってあげ、舌を噛み切ったりしないようにしつつ、口腔内の物が外に除去できるようにして窒息を防ぐことが大切です。発作時間は通常数十秒から数分で終わることが多いのですが、それ以上続いたり発作後も反応がきわめて鈍い場合は救急病院に連絡するべきです。