高血圧:静かなる脅威から身を守るために知っておきたいこと

「血圧が高めですね」

健康診断でこのように言われた経験はありませんか?高血圧は、日本人にとって最も身近な生活習慣病の一つでありながら、その危険性は軽視されがちです。自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれ、気づかないうちに私たちの健康を蝕んでいきます。

今回は、高血圧の基本的な知識と、健やかな毎日を送るための対策について分かりやすく解説します。

そもそも高血圧とは?

高血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力(圧力)が、基準値よりも常に高い状態を指します。血管に常に強い圧力がかかり続けることで、血管は次第に硬く、もろくなっていきます(動脈硬化)。

なぜ高血圧になるのか?

高血圧の主な原因は、生活習慣と遺伝的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

食生活の乱れ:特に塩分(ナトリウム)の過剰摂取は、体内に水分を溜め込み、血液量を増やすことで血圧を上げる最大の要因です。
運動不足:運動は血行を促進し、血管のしなやかさを保つのに役立ちます。
肥満:内臓脂肪が増えると、血圧を上げるホルモンが分泌されやすくなります。
ストレス:精神的な緊張は交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上昇させます。
喫煙・過度の飲酒:タバコは血管を傷つけ、アルコールは長期的に血圧を上げる原因となります。
遺伝的体質:ご家族に高血圧の方がいる場合、体質的に血圧が上がりやすいことがあります。

放置するとどうなる?重大な病気のリスク

高血圧を放置し、動脈硬化が進行すると、ある日突然、命に関わる病気を引き起こす可能性があります。

脳の病気:脳卒中(脳梗塞、脳出血)
心臓の病気:心筋梗塞、狭心症、心不全
腎臓の病気:腎硬化症、腎不全

これらの病気は、命が助かったとしても、体に麻痺が残るなど、その後の生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

今日からできる!高血圧の対策と根本治療

高血圧の治療は、薬物療法と生活習慣の改善が二本柱となりますが、特に重要となるのが日々の生活を見直すことです。これは病気の進行を防ぐだけでなく、より根本的な健康を取り戻す「根本治療」への第一歩です。

1. 栄養療法(食事の見直し)
減塩:まずは「減塩」から始めましょう。漬物や干物、加工食品、麺類の汁などを控えるだけでも効果的です。目標は1日6g未満です。
カリウムを摂る:カリウムは体内の余分なナトリウムを排出する働きがあります。野菜、果物、海藻類に多く含まれています。
バランスの良い食事:特定のものだけを食べるのではなく、魚、大豆製品、野菜、きのこ類などをバランス良く摂る「DASH食」のような食事が推奨されています。

2. 適度な運動
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を、1日30分程度、週に3〜5日行うのが効果的です。無理のない範囲で継続することが大切です。

3. 適正体重の維持
肥満気味の方は、減量するだけで血圧が下がることが多くあります。

4. ストレス管理
趣味の時間を持つ、ゆっくり入浴する、十分な睡眠をとるなど、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。

5. 禁煙と節酒
禁煙は必須です。飲酒は適量を守りましょう。

まとめ:自分の血圧を知り、未来の健康を守ろう

高血圧は自覚症状がないからこそ、定期的に血圧を測定し、自分の体の状態を知ることが何よりも大切です。家庭用の血圧計で日々の変化を記録するのも良いでしょう。

そして、もし高血圧と診断されたら、医師に相談の上、生活習慣の改善に真摯に取り組むことが、10年後、20年後のあなたの健康を守ることに繋がります。薬はあくまで対症療法の一つです。生活習慣という根本原因を見つめ直し、自然な形で元気になっていくことを目指しましょう(参考

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