脳に関する検査

【脳に関する検査について】

脳神経外科でよく行われる検査について説明いたしましょう。最近よく外来でMRIを撮って欲しいとおっしゃる方が増えてきました。でもCTとMRIの違いが何なのか、それぞれの利点、欠点も理解されずただMRIの方が上級であるように思っていらっしゃる方が多いように感じます。ではCTとMRIの違いは何なのでしょう?

CTとは:患者さんを中心に回転しつつ色々な角度からレントゲンを何枚も撮影してその影の写り方から内部の様子をコンピュータで計算して輪切りの像を造るものです(現在では10秒程度の短時間で)。CTでは骨や石灰分、金属、出血などが白く写り、脳梗塞や脳浮腫(むくみ)、髄液、空気などが黒く写ります。外傷の場合や、脳出血、くも膜下出血を心配するならMRIよりCTの方が骨折や頭蓋内の出血の有無を確実に発見できます。ただし脳梗塞の初期の頃や小さな梗塞に関してはCTは苦手です。また骨に囲まれた小脳や脳幹部(後頭部や首の近くの延髄など)が見えにくいのも欠点です。今では(造影剤を点滴しなければなりませんが)、マルチスライスCTで脳や頚部の血管を立体画像として描出することも可能になっています。

ではMRIは:というと放射線ではなく強力な磁気をかけてそれを解除したときの生体内の水分子の動き方の違いで画像の濃淡をつけるものです。ですから顔の近くに金属があると(たとえば差し歯など)その影響で画像が歪んでしまいます。またペースメーカーや人工関節が入っている人は、機械が狂ったり、熱をもったりしてしまうので撮る事ができません。また、騒音と撮影に時間がかかる(15~20分程度)ことや、閉所恐怖症の人には不向きなところが欠点です。そしてMRIの良いところは骨の影響を受けにくいため、CTで見えにくかった小脳や脳幹部はとてもきれいに写りますし、小さな脳梗塞や発症間もない脳梗塞も(2~3時間くらい経てば)その大きさや場所がわかるのが特徴です。またMRIの中から血管の情報だけを取り出したものがMRAというもので、詰まりかけた血管や脳動脈瘤の有無も判別できます。

ですから、なんでもMRIが良い訳ではなく、その症状や状況に応じてCT、MRIを使い分けるべきなのです。
また脳の血流量を部分毎に調べるXeCT(ゼノンCT)SPECT(スペクト)PET(ペット)などという検査もあります。これは脳梗塞を起こした人の今後の梗塞の拡がりを予測したり、外傷後の意識の回復のめどや認知症の具合を計るのに有効です。その他、首の部分の動脈を超音波で調べて、動脈硬化による狭窄や閉塞の様子をみる頚部エコーや、てんかんの診断に有用な脳波、四肢の血管抵抗(血流速度)をみる事で動脈硬化度を知る方法もでてきました。それぞれの状況や目的、侵襲(危険性)の程度を考えながら必要に応じて検査を順番に組んでいっているのが一般的です。