神経症状について

皆さんは失語症という言葉をお聞きになったことがありますか?失語症とは呂律が回らない(舌がうまく回らない感じ)という「構音障害」というものとは異なり、*人の言っていることが理解できず、ベラベラと勝手にしゃべったり、*言っていることは理解しているのだが言いたいことが言えない、言葉にならないというものです。前者を感覚性失語といい右利きの人のほとんどは左脳の側頭葉にその中枢が存在し、後者を運動性失語と呼び、前頭葉にその中枢があります。ただし脳の障害の範囲によってはこのふたつが合わさって出てくる事が多いのです。では、これらはリハビリで回復するのでしょうか? 【感覚性失語】、つまりこちらの言っていることが理解できない失語の場合はリハビリの意味や必要性、また指導の内容が理解できないためリハビリによる効果はほとんどなく、時間だけが解決する可能性をもっているのです。一方、【運動性失語】の方はこちらの意図が理解できるので口の形を作ったり、繰り返し発音の練習をして下さるのでリハビリの効果があります。ただし、現在この言語訓練を行える言語療法士はまだ限られた施設にしかいないため、全ての患者さんに十分なリハビリが行き渡っていないと言うのが現状です。

では次に失認という言葉を聞いたことがありますか?

これは物事の認識ができなくなる事で、いろいろな症状として認められます。例えば左右が分からなくなる左右失認、手の指のどれが何指かわからなくなる手指失認、計算が出来ない失算、文字が書けない失書、地図を見ても自分がどこにいるのか分からなくなるなど、様々なものがあり麻痺と違ってよく調べてみないと、ぱっと見には分からない障害なのです。でもこれは逆に言えば一見普通に見えるので、会社に復職した後も、「仕事をサボっているのではないか、注意が足りないのでは、もっと真剣にやってくれねば」、など周囲から言われ本人は一生懸命やっているのですが、うまく出来なくて悩んで追い込まれてしまう事がよくあります。ですからこれらの症状が残っている人は、いくら普通に体が動かせても、あせって復職せずじっくり自宅やリハビリ施設で訓練をしてから会社にもどらないと社内での評価が下がり下手すると、この厳しい世の中リストラの対象にされてしまいます。

さて一般に患者様のご家族の方はリハビリはやればやるだけ回復すると思っていらっしゃる方が多いように思います。しかし現実はそうではなく、やはり障害を受けた範囲が大きければ大きいほど頑張ってもたどり着けるゴールは、やはりある程度に決まっている事(当初の障害の重さ、年齢、体力、本人のやる気、周囲のサポートでほぼ決まります。) また、リハビリは人にやってもらうものではなく、自分でやり続けるものだという事をもっと認識していただきたいと思います。入院中リハビリの後はもうノルマは終わったとベットで寝ているだけの患者様が多いのが現状です。睡眠や食事の時間を除いても7~8時間はあり、その時間がもったいないのです!。自分の体なのですから、もっとストイックになってもらいたいな~と、いつも感じています。